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肝臓の樹状細胞

肝臓は生体防御にとって不可欠な臓器であり、強力なマクロファージシステム(Kupffer細胞)で武装されているだけでなく、樹状細胞(DC)とリンパ球により盛んに巡回され、常に監視さ(免疫学的サーベイランス)れている。

有事には前駆細胞が肝臓にリクルート(動員)・集積し、抗原を摂取した後、短時間で類洞・リンパ転位を起こし肝リンパ節に遊走する。

肝臓は迅速で適切な免疫応答を惹起でき、肝臓内の抗原に対する局所的防御のみならず血行性の抗原に対する全身性防御にあずかるものと思われる。

また肝内には祖細胞が存在し、肝移植時の免疫寛容誘導に重要な役割を担うと考えらる。

正常肝におけるDCの動態と役割

ふつうは前駆細胞が骨髄からコンスタントに血液を通じ供給され、見張り番の間質性樹状細胞(interstitialDC)としてGlisson鞘の門脈領域などの肝臓間質に分布する。

ヒトではMHCクラス1、MHCクラスII抗原、CD45、S100などが陽性で、ラット、マウスではDCに特異的なモノクローナル抗体(OX62,NLDC145)も少なくとも一部が陽性となる。
interstitialDCは抗原刺激がない場合でも2〜3週間で肝臓を去り、肝リンパから肝所属リンパ節へ遊走しT細胞領域(傍皮質)に集積する。

肝リンパヘ流れ込みは他臓器のリンパに比べ有意に大きい。

リンパ節では、DCはリンパ球のように輸出リンパ管へ出ることはなく、傍皮質で一生を終えるとされる。

この恒常状態のDCは、抗原刺激を受けなくても一定期間が経つと加齢により新たな歩哨と交代するのかもしれない。

最近は、自己のアポトーシスを起こした細胞などを取り込み、それを提示し自己抗原に対する免疫寛容を維持しているという説もある。

非常時のDCの動態と役割

感染や炎症のような非常時には、肝内のDCの出入りは大きく増加する(図3)。

肝臓は門脈を介して消化管からの病原体が侵入してくる機会が多い。所内のinterstitialDCは侵入した抗原を取り込みプロセッシングを行い、肝リンパから所属リンパ節のT細胞領域に遊走する。

DCはT細胞、B細胞とクラスターを形成、抗原を提示し免疫応答を惹起することになる。

さらに最近は、有事にはDC前駆細胞が肝臓に補充してくることがわかってきた。

たとえば、墨やラテックスなどの顆粒状異物をラットに静注すると、6〜8時間でその穎粒を貧食したDCが肝リンパに出現する。

これは血液感染のモデルであり、感染・炎症が起こったとき、早期から前駆細胞が肝臓に補充し、抗原を摂取した後、すみやかに類洞・リンパ転位を起こし、所属リンパ節で免疫応答を引き起こす仕組みになっていると思われる。

さまざまな感染症で類洞領域や門脈領域に肉芽が形成されることが多いが、そこにDCが出現し、免疫応答を肉芽内または局所リンパ節で引き起こす可能性が示唆されている。

呼吸器においても肝臓と同様な反応が報告されており、肝臓を含め、消化器・呼吸器などの感染が起こりやすい部位では、感染初期に見張り番期のDCに加えて前駆細胞がいちはやく駆けつけ、抗原を捕捉して最速の免疫応答を惹起するというシステムが存在することが考えられる。

DCの類洞・リンパ転位とKupfrer細胞の役割

DCは血液中にも存在し、DC前駆細胞、または抗原輸送中のDCにあたると考えられる。

DCを正常ラットに静脈投与すると肝臓から類洞・リンパ転位を起こし,その多くが選択的に肝リンパ節に集積する。

肝臓切片を免疫染色すると、正常でも顆粒状異物投与後でも、類洞領域のDCはKupffer細胞と近接して存在することが多い。さらに,生きたDC懸濁液を新鮮凍結切片に載せ培養すると、肝臓切片上のKup丘er細胞に選択的に結合することがわかりレクチン・糖鎖反応による結合であることが明らかになった。

おそらくKupffer細胞は有事の際、ケモカインを産生してDCを補充し、選択的結合を介して肝臓に集積させ、DCが抗原を捕捉する機会をつくり、細胞間相互作用によりDCの活性化・分化誘導を行ったり、類洞から肝リンパヘの転位を促すものと思われる。

Kupffer細胞はスカベンジャーとして抗原を非特異的に貧食・処理するだけでなく、特異的な免疫応答を誘導する仕掛人的な役割を果たしていることが示唆される。

有事におけるDC前駆細胞の補充と類洞・リンパ転位は、肝所属リンパ節で迅速で適切な免疫応答を惹起し、血行性の抗原に対する肝臓による全身性防御にあずかるものと思われる。

inter-stitialDCは血流に直接接していないので、類洞内の抗原をほとんど捕捉しないといわれる。

interstialDCは,主に肝間質内まで侵入した抗原に対する局所的防御にあずかるのであろう。

肝移植と肝臓内相細胞の存在

肝臓は移植後の拒絶反応が起こりにくい臓器として知られ、門脈から抗原を投与すると免疫寛容を起こしやすいことも報告されている。

肝臓にもDC祖細胞が存在し、肝移植により宿主のリンパ組織に遊走し、異系免疫応答を引き起こすことを認めている。

この免疫応答が拒絶反応につながるのか、または免疫寛容を誘導するのかどちらかはまだわかっていない。

マウスで未熟な肝臓のDCが宿主の拒絶反応を抑制し、移植肝に対する寛容を誘導するという報告もある。


【類洞・リンパ転位】
肝臓では血液中のDCやリンパ球が盛んに類洞から血管外に出て遊走し、門脈領域に始まるリンパ管に入る。このユニークな遊走方式のことを指す。
【DC祖細胞】
自己複製能力のあるDCの幹細胞のこと。主に骨髄に存在し、DC前駆細胞を産生する。

(樹状細胞基礎から臨床へ(南光堂)より)

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